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タイ料理といえば、まず名前が挙がるのが「トムヤムクン」。その独特な香りと、酸味・辛味・旨味が絶妙に混ざり合ったスープは、一度食べたら忘れられない味です。世界中の食通からも愛され、日本のレストランや家庭でも人気が高まっています。
このページでは、トムヤムクンの魅力や歴史、ちょっとした豆知識、そして作り方までを幅広くご紹介します。
トムヤムクンとは
トムヤムクンは、タイを代表するスープ料理で、「トム=煮る」「ヤム=混ぜる」「クン=エビ」という意味を持つ言葉です。
その名の通り、エビを使った酸っぱくて辛いスープで、レモングラス、カフィアライム(こぶみかん)の葉、ガランガル(タイしょうが)、チリ、ナンプラー(魚醤)など、東南アジア特有の香辛料やハーブがふんだんに使われています。
特徴的なのはその味わい。酸味・辛味・塩味・旨味が絶妙なバランスで混ざり合い、一口でタイの風を感じられるような味です。世界中のアジアンレストランでも人気が高く、日本でも広く親しまれています。
トムヤムクンの歴史
トムヤムクンの起源は、タイの中部地域、特にチャオプラヤー川流域にあると言われています。この地域では古くから淡水の魚介類が豊富にとれ、川エビを使った料理が多くありました。
その中で生まれたのが、スパイスとハーブを使って煮込む「トムヤム」という料理法です。
現在のようにレモングラスやナンプラーなどが使われるようになったのは、18世紀以降のアユタヤ王朝時代の終わり頃からとされており、宮廷料理にも取り入れられるほどの定番となっていきました。
1980年代以降は、タイの観光ブームや国際化の波に乗り、海外でも知られるようになります。2001年には、タイ政府が「トムヤムクン外交」として世界にタイ文化を広めるシンボルの一つとして取り上げました。
トムヤムクンにまつわる面白い話・豆知識
1. トムヤムクン危機(Tom Yum Kung Crisis)
1997年にタイを震源として発生したアジア通貨危機は、経済用語として「トムヤムクン危機」とも呼ばれています。これは、東南アジア諸国に連鎖的に広がった金融危機の象徴として、タイを代表する料理「トムヤムクン」の名が比喩的に使われたものです。
当時、タイのバーツは投機的な売りを受けて急落し、その影響でアジア全体の経済が混乱に陥りました。日本でも金融機関の破綻などの影響があり、そのインパクトの大きさがこのユニークな名称に反映されています。
このネーミングには皮肉も込められており、”辛くて熱い”という料理の特徴が、経済の混乱と重ね合わされた形になっています。
2. トムヤムクンは2種類ある
実はトムヤムクンには「ナムサイ(透明スープ)」と「ナムコン(ココナッツ入りクリーミータイプ)」の2種類があることをご存じでしょうか?
- トムヤム・ナムサイ(ต้มยำกุ้งน้ำใส)
伝統的なスタイルで、鶏ガラやエビのダシにレモングラス、ガランガル、ナムプラーなどを加えて作ります。スープは澄んでいて、酸味と辛味が際立ち、ハーブの香りが豊かに感じられます。タイ現地ではこちらが一般的です。 - トムヤム・ナムコン(ต้มยำกุ้งน้ำข้น)
近年人気のあるスタイルで、スープにココナッツミルクやエバミルクを加えることでクリーミーな味わいになります。見た目もややオレンジがかっていて、まろやかさとコクが加わり、外国人観光客を中心に人気を集めています。
旅行者が「トムヤムクン」を注文して驚くのは、好みによってこの2タイプが出てくること。事前に好みを伝えるとよいでしょう。
3. ユネスコの無形文化遺産候補にも?
タイ料理全体が、タイ政府の推進によりユネスコの無形文化遺産登録を目指しています。その中でも、トムヤムクンは特に重要な料理の一つとして位置づけられています。
2020年、タイ政府は「タイ料理を通じて国のアイデンティティを守り、伝統を継承する」ことを目的にユネスコへの申請準備を本格化。パッタイやソムタムと並んで、トムヤムクンは代表的な象徴として国際的にアピールされています。
タイ国内では、子どもたちへの調理教育や地域食文化の保存活動も行われており、ただのレシピ以上に文化遺産としての価値が高められつつあります。
4. トムヤムクンは“薬膳”にもなる?健康効果の秘密
トムヤムクンには、実は健康にもよい食材が多く含まれており、東南アジアでは“食べる薬”ともいわれることがあります。
- レモングラス:胃腸を整え、消化を助ける効果があり、香り成分にはリラックス効果も。
- ガランガル(タイしょうが):抗炎症作用や抗菌作用があり、古くから風邪予防にも使われてきました。
- 唐辛子:代謝を上げ、脂肪燃焼を促進する効果があり、冷え性対策にも◎。
- ライムやカフィアライムの葉:ビタミンCが豊富で、美肌や免疫力アップにも役立ちます。
これらのスパイスやハーブは、西洋医学とは異なるアプローチで、タイの伝統医療とも関係があります。「おいしいのに体にいい」——それがトムヤムクンが長く愛されている理由の一つでもあります。
トムヤムクンの作り方(クリーミータイプ)
スパイスとハーブの香りを生かした本格的なトムヤムクンは、材料さえ揃えば意外と簡単に作れます。ここでは、観光客にも人気のある「ココナッツミルク入り・ナムコン」タイプの作り方を紹介します。
材料(2人分)
- エビ(殻付き・背ワタを取ったもの):6尾
- マッシュルーム:4~5個(スライス)
- 水:600ml
- レモングラス:2本(斜め切り)
- ガランガル(薄切りの生姜でも代用可):4~5枚
- カフィアライムの葉(あれば):2枚
- ナンプラー:大さじ1と1/2
- ライム果汁:大さじ2
- チリペースト(ナムプリックパオ):小さじ2
- ココナッツミルク:100ml
- 鷹の爪(唐辛子・砕いたもの):1~2本分(お好みで)
作り方
①:エビの下処理をする
エビは殻を残したまま背中に切り込みを入れ、背ワタを取り除きます。頭付きのものは、軽く押して中の味噌を逃さないようにすると、スープに深みが出ます。エビの殻からも良いダシが出るので、そのまま煮込みます。
②:香味スープを作る
鍋に水(600ml)を入れ、中火にかけます。沸騰してきたら、レモングラス・ガランガル・カフィアライムの葉を加えます。これらのハーブ類を2〜3分ほど煮て、香りを十分に引き出します。
※レモングラスは切った後、軽く叩いて香りを出すのがおすすめです
③:エビときのこを加える
香りが立ってきたら、下処理したエビを加えます。色が赤く変わってきたら、スライスしたマッシュルームを加えましょう。
火は中火のまま、エビに火が通るまで煮込みます(約3〜4分)。
④:調味料を加える
エビとマッシュルームに火が通ったら、ナンプラーとライム果汁、ナムプリックパオを加えて味を整えます。辛味が足りない場合は、ここで砕いた鷹の爪を加えてください。
辛味・酸味・塩味のバランスを味見しながら調整するとよいです。
⑤:仕上げにココナッツミルクを加える
最後にココナッツミルクを加えて、全体をやさしく混ぜます。ひと煮立ちさせたら完成です。
※煮すぎると分離するので、沸騰させすぎないよう注意。
盛り付けとポイント
器に注ぎ、お好みでパクチーやライムスライスを添えると、見た目も香りも本格的になります。パンチの効いた味が特徴なので、白ごはんやタイ風のもち米との相性も抜群です。
まとめ
トムヤムクンは、タイの風土と食文化が詰まった魅力あふれる一皿です。歴史的背景や多彩なバリエーション、そして健康効果まで備えた奥深い料理として、世界中にファンを持っています。
一度、自宅でその香りと味を体験してみてはいかがでしょうか?食卓が一気にエスニックに彩られること間違いなしです。
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