南米の大地から~トウモロコシ料理 アレパ

Colombia

皆さんはアレパという料理をご存じでしょうか。
日本ではまだ聞きなじみの少ないこの料理は、日本の裏側の南米でとても親しまれています。
今回はそのアレパの歴史や作り方をご紹介していきます。

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アレパとは

アレパは、コロンビアやベネズエラを中心に南米で親しまれているとうもろこし粉料理です。
日本においての「おにぎり」的な存在で、国民食といえるほどポピュラーな存在となっています。

手のひらサイズのその円盤状の食べ物は、外はサクッと、中はもちもちとした食感が特徴です。
プレクックドコーンフラワー(とうもろこし粉)、水、塩を主原料とし、焼く、揚げる、蒸すなど多様な方法で調理します。

アレパの歴史

アレパの起源は数千年前。南米の先住民がトウモロコシをすり潰して焼いた「薄焼きのパン」が原型と言われています。
当時からベネズエラやコロンビアの先住民は、トウモロコシを主食として日常的に食べていました。

「arepa」という名前も、ベネズエラ先住民の言葉「erepa(トウモロコシを意味)」が語源だとされます。

そして時が流れ16世紀、スペインによる植民地支配が行われました。
しかし、アレパは食文化として残り、スペイン人にも日常食として取り入れられています。

その後19世紀以降、アレパはベネズエラ・コロンビアで「国民食」として定着します。
各地で独自のアレンジなども生まれ、発展していきました。

現在は移民などを通じて世界へと広がり、国際的な料理として認知されています。

アレパのアレンジメニュー

1. Reina Pepiada(レイナ・ペピアーダ)

さっぱり系でベネズエラを代表する定番アレパです。
クリーミーでさっぱりしており、アボカドのまろやかさと鶏肉のボリューム感が魅力の一品です。
名前の由来は「美人コンテストの女王」からきているそうです。

2. Arepa de Queso(チーズアレパ)

軽食や朝食として手軽に食べられるのがこのチーズアレパです。
とろけるチーズや香ばしさと塩気が食欲をそそる人気のある一品です。

3. Pabellón Arepa(パベジョン風アレパ)

ベネズエラの伝統料理「パベジョン・クリオージョ」をアレパに詰めたアレンジです。

パベジョン・クリオージョ(Pabellón Criollo)とは、牛肉・豆・ご飯・バナナを組み合わせたベネズエラの定食です。

パベジョン風アレパにも牛肉の煮込みや揚げバナナなどが使われます。
甘じょっぱい風味が特徴で、ほかにはない豪華なアレンジです。

4. Arepa de Pernil(ペルニル入りアレパ)

ペルニルとはローストポークのことです。
ジューシーな豚肉の旨みと香辛料の効いたソースがパンチのある味わいが楽しめます。

お祝い事やクリスマスに人気のアレンジです。

5. Arepa Vegana(ビーガンアレパ)

名前の通りグリル野菜やビーガンチーズ、黒豆などを使ったアレンジメニューです。
ヘルシー志向やベジタリアンの方に人気があり、最近ではアレパ専門店でも定番となりました。
野菜のフレッシュさと豆のほのかな甘みですっきりとした後味が特徴です。
栄養バランスも良く、健康を気にしている人にもお勧めできる一品となっています。

アレパの雑学

1. 国境をまたぐ論争

アレパは、ベネズエラとコロンビア間でたびたびどちらが本家かという議論が起こります。
まるでジョロフライス論争のようです(笑)。
これは両国の食文化にアレパが深く根付いていること、両国のアレパに違いがあるからこそ起こることです。

両国のアレパの特徴をご紹介しておきますね。

  • ベネズエラ:アレパを割って中に具材をたっぷり挟む「サンドイッチ風」が主流。食事の中心として食べられる。
  • コロンビア:薄めに焼いてチーズを練り込んだり、揚げたりするバリエーションが多い。食事の付け合わせとして登場することも多い。

どちらも自分たちの国民食として誇りを持っていますが、あくまで冗談交じりの食文化論争として楽しまれています。

2. アレパ専用粉「P.A.N.」

実はアレパの普及にはベネズエラで開発されたあるものが大きく貢献しています。

それが「P.A.N.(パン)」と呼ばれるプレクックドコーンフラワーです。
1960年代に開発されたこの「P.A.N.」は水と塩を混ぜるだけで簡単に生地を作れます。
これは従来のトウモロコシを煮て、乾燥させて、粉にするという工程をなくすことに成功しました。

この商品によって、アレパは「毎日家庭で作れる料理」として完全に定着しました。
今ではべネズエラ移民の増加とともに、世界各国のラテン食材店でも販売されるようになりました。

3. アレパの日(Día Mundial de la Arepa)

世界各地に広がるベネズエラ移民が、自国の文化を共有し、アイデンティティを守るためにベネズエラの移民団体によって制定されました。
2012年に始められたこの記念日は、毎年9月の第2土曜日に祝われます。
海外の都市でもアレパフェスティバルやチャリティイベントが開催され、アレパを食べながら文化交流が行われます。
ニューヨーク、東京などでもイベントが行われており、グローバルにアレパが広まっている証拠となっています。

4. 宇宙食にもなったアレパ

1999年、ベネズエラ出身の宇宙飛行士カルロス・コスタがスペースシャトルのミッションに参加した際、特別に加工されたアレパを宇宙に持ち込みました。
これは「アレパは宇宙で食べられた南米料理」と話題を呼びます。
日常の家庭料理であるアレパが、母国の人々にとって「国の誇り」として強く意識されたエピソードとなっています。

アレパの作り方

材料(4〜5枚分)

  • プレクックドコーンフラワー(P.A.N.など) … 2カップ(約250g)
  • 水 … 2と1/2カップ(約600ml)
  • 塩 … 小さじ1
  • (お好みで)オリーブオイルまたはバター … 少量

作り方

  1. 水と塩を混ぜる
    大きめのボウルに水を入れ、塩を溶かす。
  2. 粉を加える
    プレクックドコーンフラワーを少しずつ加えながら手で混ぜる。
    ダマが残らないように、よくこねる。
  3. 生地を休ませる
    5分ほど置くと水分が馴染み、柔らかくまとまる。
    (目安:耳たぶくらいの柔らかさ。硬すぎれば水を足し、柔らかすぎれば粉を追加。)
  4. 成形する
    生地を手に取り、テニスボールくらいに丸める。
    その後、手のひらで押しつぶして直径8〜10cm、厚さ1.5〜2cmの円盤形にする。
  5. 焼く(トスタール)
    中火に熱したフライパン(薄く油をひいてもOK)で、両面を約5〜7分ずつ焼く。
    表面にこんがり焼き色がついたらOK。
  6. 仕上げ(オーブン or 蒸し)
    • より中までふっくら仕上げたい場合:200℃のオーブンで10分ほど加熱。
    • そのままでも食べられるが、外カリッ・中モチッの理想形に仕上がる。
  7. 食べる
    ナイフで横に切り込みを入れてポケット状にし、好きな具材(チーズ、肉、アボカドなど)を詰めて完成!

美味しく作るコツ

  • 焼きすぎず、表面はカリッと、中はしっとり感を残すのが理想。
  • 生地が手にくっつくときは粉を少量足す。逆に割れるときは水を少し加える。
  • 日本で作る場合は「P.A.N.」が輸入食材店や通販で手に入るので便利。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
今回はベネズエラ、コロンビアの国民食「アレパ」をご紹介しました。

南米で愛されている料理が今では世界中で親しまれているその魅力を少しでもお伝えできたでしょうか。
手軽に食べれるものから伝統と混ざり合った豪華なアレンジまで、手軽に作れるアレパに興味をもっていただけると嬉しいです。
日本でもベネズエラ料理のお店などで楽しむことができますし、上記のレシピで家庭で楽しむことができます。

ぜひ皆さんも自分好みのアレパを見つけて楽しんで味わってください!

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