香りで巡るビリヤニの世界

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アジアの垣根を飛び越えて世界中で愛されるビリヤニ。今回はその意外なルーツや時代とともに生まれてきたバリエーションなどをご紹介します。

TasteTuneでは、世界のさまざまな料理を紹介していくとともに、その料理に合った音楽も提供しています。YouTubeをはじめ、Spotifyなどの各種サブスクリプションでも配信されているので、ぜひお聞きください。

ビリヤニとは

ビリヤニとは、インド・南アジア発祥の炊き込みご飯料理です。スパイス、バスマティライス、肉(鶏・羊・牛など)、魚介、野菜などを層にして調理します。
ぱっと見はカレーピラフに似ていますが、調理法が異なる点が特徴です。

そんな「ビリヤニ(Biryani)」という名前は、ペルシャ語の「birian(焼く、炒める)」や「beryan(焼かれたもの)」に由来します。なので、ルーツはペルシャ料理であると広く考えられています。

ビリヤニの歴史

インド料理であるビリヤニのルーツがペルシャ料理にある理由はムガル帝国からの支配にあります。
ムガル帝国は、16~19世紀にかけてインド亜大陸に存在したイスラム帝国です。イスラム文化とペルシャ料理の影響を受けた王侯貴族の文化をもっており、インド北部への侵攻時に持ち込まれています。

そんな彼らの宮廷料理(ムガライ料理)に肉や米、スパイスを用いた炊き込み料理が登場します。それがビリヤニの原型になったといわれています。

しかし、一説では、ビリヤニはムガル軍の兵士のための食事として発展したとも言われます。
こちらは、長期遠征でも傷みにくく、栄養価も高いシンプルな「一鍋料理」が求められたために生まれたという説です。肉や米などを一緒に煮込み簡単にできるので、兵士に求められるのも頷けます。

その後、ビリヤニはパキスタン、バングラデシュ、スリランカへも広がり、それぞれにローカルな進化を遂げました。さらに、19~20世紀の移民や交易の影響で、東南アジア、中東、アフリカ、イギリスなどにも拡散。
現代では、世界中に多様なバリエーションが存在するグローバル料理となっています。

ビリヤニの多様化

ムガル帝国の支配がインド各地に広がるにつれ、現地の風土・宗教・食文化と融合し、地域ごとに独自のビリヤニが誕生しました。今回はその一例を紹介します。

● ハイデラバード風

肉を生のままスパイスと共にご飯と層にして炊く「カッチ式」。ニザーム王国の宮廷料理として発展し、ビリヤニの王様とも称されることもあります。スパイスは非常に豊富で、香りが強く、スパイシーで濃厚な味が楽しめます。

● ラクナウ(アワディ)風

肉とご飯を別に調理し、最後に層にして蒸す「パッキ式」。優雅なナワーブ(貴族)文化に根差した宮廷料理であり、スパイスは控えめで繊細な香りと上品な味わいです。

● マラバール(ケーララ州)風

南インド・ケーララ州のマラバール地方に伝わる、アラブ商人の影響を強く受けた沿岸料理文化です。
ココナッツオイル、レーズン、カシューナッツ、玉ねぎがたっぷり使われており、魚介類(特にエビや魚)やチキンが使われることも多いです。スパイスの辛さよりも香ばしさや甘みが際立つ一品です。

● コルカタ風

ゆで卵とじゃがいもが入るのが特徴のスタイルです。東インド・西ベンガル州の都市コルカタ(旧カルカッタ)にムガル王朝の子孫が移り住んだことで広まりました。ほかに比べて味はマイルドで少し甘め、香りも控えめとなっています。

● パキスタン風ビリヤニ

パキスタン各地で愛されるが特にカラチやシンド地方が有名で、インド系移民文化の影響を強く受けて発展しました。
赤みのある見た目をしており、強い香りと辛さが一体になったパンチのある味です。

● スリランカ風ビリヤニ

南インドと文化が近く、ムスリム系住民が広めました。現地では「ブリヤニ」とも呼ばれるそうです。
スリランカ特有のチリ系スパイスが効いて、辛さはかなり強めだそうです。チキン、ビーフ、シーフードなど自由度が高く、サイドにフライドエッグやチャットニーが添えられます。

ビリヤニにまつわる豆知識

1. 「ビリヤニ警察」

SNSやビリヤニ愛好家の間では、「Biryani Police(ビリヤニ警察)」という言葉が存在するようです。
これは、「これは本物のビリヤニではない!」と料理法や素材について厳しく批判する熱心なファン層を指す俗称だそうです。

たとえば「混ぜご飯はビリヤニじゃない!」「サフランが入っていないのはニセモノ!」など、ビリヤニの伝統と定義に強いこだわりを持つ人たちが該当します。

特にインド、パキスタン、バングラデシュでは、ビリヤニの「正しさ」を巡って真剣な議論が交わされることもあるそうです。

2. 宗教・文化とビリヤニの関係

ビリヤニは、イスラム教徒の祝祭(イード、結婚式など)でふるまわれる「ごちそう料理」としての側面が強くあります。

一方、ヒンドゥー教徒の地域では、肉の種類に配慮したベジタリアン・ビリヤニが定着しており、野菜やパニール(インドのチーズ)が使われています。

つまり、ビリニヤは宗教的背景に応じて進化してきた非常に柔軟な料理でもあるといえます。

3. インスタントビリヤニが進化中

ビリヤニの人気により、現代ではレトルト、冷凍食品、ミールキット、即席スパイスミックスなどが世界中で販売されています。
日本のスーパーや通販でも、「SHAAN」「MDH」「Eastern」などのビリヤニマサラ(スパイスミックス)が購入可能です。

短時間で調理できるように工夫された製品は、忙しい人でも手軽に「それっぽいビリヤニ」が楽しめます。

ビリヤニの作り方(ハイデラバード風・カッチ式)

材料(4人分の目安)

【肉のマリネ用】

  • 鶏もも肉(骨付きがおすすめ) … 約500g
  • プレーンヨーグルト … 100g
  • おろしにんにく … 小さじ1
  • おろししょうが … 小さじ1
  • レモン汁 … 大さじ1
  • ターメリック … 小さじ1/2
  • チリパウダー … 小さじ1
  • クミンパウダー … 小さじ1
  • コリアンダーパウダー … 小さじ1
  • ガラムマサラ … 小さじ1
  • 塩 … 小さじ1
  • 揚げ玉ねぎ(あれば) … ひとつかみ

【ご飯用】

  • バスマティライス … 2合(300g)
  • 水 … 適量
  • 塩 … 小さじ1
  • クローブ、シナモン、ベイリーフ、カルダモン … 各2〜3個(お好みで)

【その他】

  • サフラン … 少量(ぬるま湯または牛乳大さじ2に浸しておく)
  • 揚げ玉ねぎ(追加用) … 適量
  • ギー(またはバター・サラダ油) … 大さじ2
  • フレッシュミント、コリアンダー(香菜) … 適量(みじん切り)

作り方

【1】鶏肉をマリネする(最低2時間、可能なら一晩)

鶏肉を食べやすい大きさに切り、マリネ用の全ての材料と混ぜ合わせて密閉容器に入れる。

冷蔵庫で寝かせて味を染み込ませる。

【2】バスマティライスを下茹でする

米は研がずに軽くすすいで30分ほど水に浸けておく。

鍋にたっぷりの湯を沸かし、塩とスパイスを加える。

米を加え、7〜8割火が通る程度に茹でたらざるに上げ、水を切る。
(※炊きすぎ注意:芯がわずかに残るくらい)

【3】鍋に層を作る

厚手の鍋や土鍋にマリネした鶏肉を敷き詰める(汁ごとOK)。

その上に下茹でしたご飯を重ねる(1〜2段階に分けてもよい)。

トッピングとして:

  • サフランミルク
  • フライドオニオン
  • ミント・コリアンダー
  • ギー(少しかける)

【4】密閉して蒸し焼き(ダム調理)

鍋に蓋をして、できるだけ密閉状態にする。蓋と鍋の間に濡れ布巾を挟んでもOK。

弱火にして、30〜40分ほど加熱。

  • 最初5分中火→すぐに極弱火でコトコト。

火を止めたあと、10分ほど蒸らす。

【5】混ぜすぎ注意!ふんわり仕上げる

炊き上がったら、底からすくうようにふんわり混ぜる。

味見して塩気や香りが足りなければ、ギーやガラムマサラを足して微調整。

盛り付け・添え物

【おすすめの添え物】

  • ライタ(ヨーグルト+玉ねぎ+キュウリ+塩)
  • ゆで卵
  • ピクルス(アチャール)
  • 薄く焼いたチャパティやパパド

まとめ

今回はインドを中心に南アジアで生まれたビリヤニについて紹介しました。
地域が宗教によって様々なバリエーションを生んできたビリヤニは、今では世界で食べられさらにその数を増やしています。

インスタント版も進化しより手軽に食べれるようになったこの時代に、あなたのお好みのビリヤニを探すのも一つの面白さなのではないでしょうか。

ぜひ、この記事をきっかけにお店やお家でビリヤニを味わってみてください!

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