皆さんはヴィルツグリュタを知っていますか?
ヴィルツグリュタは直訳で「ジビエのシチュー」を表す、スウェーデンで食べられるシチュー料理です。
これからのシーズンで食卓に上がるこの料理は、冬を越すためには欠かせない食文化として存在しています。
今回はそんな北欧の料理を皆さんにご紹介します!
ぜひ最後までご覧ください。
また、TasteTuneでは各国の料理を紹介するとともに、その料理を表現した音楽を配信しています♪
YoutubeやSpotifyなどで聞くことができるので、この記事とともにお楽しみください!
ヴィルツグリュタとは

ヴィルツグリュタ(Viltsgryta)はスウェーデンで食べられるシチュー料理の一種です。
名前の由来はスウェーデン語で野生生物やジビエを表す「vit」と煮込み料理やシチューを意味する「gryta」がかけ合わさったものだといわれています。
直訳でそのままジビエのシチューの意味があります。
日本ではヴィルツグリュタと表記することは少なく、ジビエのシチューやViltsgrytaとそのまま記載することが多いようです。
ヴィルツグリュタはシカやエルクと呼ばれるヘラジカ、野うさぎなどの狩猟肉を中心に調理されます。
これらの狩猟肉をじっくりと煮込み、赤ワインやベリーを加えることが特徴です。
そうすることで、肉の旨味と素朴な風味に酸味・甘味が加わり、濃厚ながらバランスの取れた味わいを引き出すことができます。
また、生クリームを最後に加えるレシピも多く、こちらはまろやかでコクが出ます。
そして、ヴィルツグリュタは秋〜冬の定番料理で、特に寒い季節に体を温める料理として親しまれます。
特に煮込み料理は保存がきくため、冬を越すための食文化として根付いています。
TasteTune「Viltsgryta」
皆さん、Tastetuneの音楽「Viltsgryta」はお聞きになりましたか?
この音楽はヴィルツグリュタからインスピレーションを得て、北欧の雄大な自然と、シチューが持つ豊かな味わいを音で表現した音楽作品です。
穏やかなストリングス、木管楽器、そして柔らかなパーカッションで始まり、リズミカルなハンドドラムが加わり、やがて重層的なヴァイオリン、力強いホルン、そして壮大なメロディが織りなすコーラスへと爆発的に盛り上がっていきます。
この音の世界は、聴く者を雪降る森の奥深くへと誘い、ヴィルツグリュタが持つ温かさと豊かさを感じさせます。
ぜひ聴いてみてください!
以下ではこの音楽作品に込められた思いや表現、工夫をご紹介します。
雪の森と静けさの音
この楽曲の中心にあるのは、雪に包まれた北欧の森の風景と、そこに息づく命の気配です。
やさしい弦楽器や木の温もりを感じる笛の音が、雪が静かに降り積もる森の神秘を描き出します。
柔らかな打楽器の響きは、雪の上をそっと歩く音や、森の奥でひっそりと息づく生き物の存在を思わせます。
その音色は、ヴィルツグリュタという料理を育んできた自然の厳しさと美しさを、耳で感じさせてくれます。
煮込む時間と分かち合う喜び
曲は、鍋でシチューをコトコトと煮込むように、穏やかに始まります。
やがてリズムが加わることで、料理の準備をする人々の活気や、食材がゆっくりと溶け合う深みが広がっていきます。
そしてクライマックスでは、力強い音が重なり合い、壮大な盛り上がりへと変化します。
それは、出来上がったヴィルツグリュタを囲んで皆が笑顔になる瞬間を表しており、シチューの濃厚な味わいと温もりを音で再現しているのです。
雄大さと温もりの物語
この楽曲全体から感じられるのは、「雄大さ」「温かさ」「力強さ」。
まるで雪深い森の中で、家族や仲間と温かいシチューを囲み、心を通わせている場面が浮かんできます。
北欧の民謡の素朴さと、映画のように壮大な音の広がりが融合し、自然の恵みと人々の絆を同時に感じさせます。
そのリズムと旋律は、聴く人を北欧の食卓へと誘い、ヴィルツグリュタが持つ「力強さ」と「共同体の精神」を伝えてくれるのです。
耳で味わうヴィルツグリュタ
この楽曲は、ただのBGMではありません。
それは「豊かな味わい」、北欧の「雄大な自然」、そして人と人をつなぐ「温かい絆」を音で感じることができる体験です。
目を閉じれば、雪の森で温かいシチューを囲む光景が浮かび、心まで満たされていくでしょう。
ぜひ、この音の旅に身をゆだね、心ゆくまで「ヴィルツグリュタ」の世界をご堪能ください。
ヴィルツグリュタの歴史

ヴィルツグリュタの歴史は狩猟から始まりました。
北ヨーロッパは古来から豊かな自然に恵まれており、狩猟は生活の重要な糧でした。
しかし、獣肉は固く筋が多いため焼くだけでは食べにくい部分が多くあります。
それに対応するために行ったのが具材を煮込む(長時間加熱)することでした。
こうすることでお肉が柔らかくなるだけでなく、スープに栄養や旨味が溶け出し余すことなく利用することもできました。
これが行われるようになったのが紀元前数世紀〜10世紀頃といわれています。
中世(11〜15世紀)になると、獣肉は貴族の象徴的な食材になり、宴席では豪華な肉料理として提供されることが増えます。
焼き物(ロースト)も多かったですが、保存や調理のしやすさからシチューや煮込みも定着します。
香辛料が輸入され始めると、煮込みにシナモンやクローブを加えるなど工夫も見られました。
近世(16〜18世紀)には、庶民の食卓にも「煮込み料理」としての獣肉料理が広まります。
保存のしやすさはそのままで、この頃に普及しだした根菜と相性が良く、肉と一緒に煮込むのが一般化しました。
現代で煮込み料理は季節料理としての意味を持ちます。
特に秋には狩猟シーズンに入るため、こういった煮込み料理は多くつくられています。
ヴィルツグリュタの雑学・面白い話
狩猟とコミュニティの象徴
北欧では秋に狩猟シーズンとなります。
獣肉は一度に大量に得られるため、大鍋で煮込んでみんなで分け合う料理として発展しました。
そのため「家族や村で分け合う」「狩猟仲間と食べる」ことが社会的な意味を持ち、共同体を象徴する料理となりました。
きのことの相性

北欧では秋のキノコ狩りも盛んです。
そのため、「きのこ入りヴィルツグリュタ」は秋の定番となっています。
特にカンタレラ(アンズタケ)を加えたものが人気があります。
赤ワインとベリー

現代のレシピでは赤ワインやコケモモ(リンゴンベリー)がよく使われます。
酸味が強いベリーは、獣肉の「ワイルドな匂い」を和らげ、ソースを爽やかに仕上げてくれます。
実はこの発想は中世からあり、当時も「酸味(果実や酢)」で獣肉を調整していました。
伝統とモダンの融合料理
ヴィルツグリュタは昔ながらの「狩猟鍋」ですが、近年はレストランでも提供されるようになりました。
クリームを加えた北欧風モダンシチューとして洗練されつつあり、「秋冬のごちそう」として定着しています。
冷凍保存しても味が深まる
ヴィルツグリュタは大鍋でつくることが多いため、残った分は冷凍されます。
冷凍したりすると味が落ちるかもと思うかもしれませんが、そんなことはなく、むしろ解凍後のほうが味がなじんでおいしいとさえ言われています。
北欧の知恵で「次の狩猟まで持たせる保存食」でもありました。
ヴィルツグリュタの作り方
材料(4人分目安)
- ジビエ肉(鹿肉・エルク肉・シカ肉など) … 約 600〜700 g(角切り)
- 乾燥きのこ(ポルチーニなど) … 適量(戻しておく)
- 玉ねぎ … 1〜2 個(みじん切り)
- ニンジン … 適量(角切り)
- パースニップなど根菜 … 適量(角切り)
- にんにく … 1〜2 片(みじん切り)
- 赤ワイン … 約 300〜400 ml
- 赤ワインビネガー … 少量(マリネ用)
- ジュニパーベリー(砕いたもの) … 小さじ 1〜2
- タイムなどハーブ … 適量
- ストックまたはブイヨン … 約 300〜400 ml
- 生クリーム … 約 200〜300 ml
- ソース用素材(ゼリー、ブラックカラントジャムなど) … 少量(風味付け用)
- 塩 … 適量
- 黒コショウ … 適量
下ごしらえ
- マリネ
肉を赤ワイン、赤ワインビネガー、砕いたジュニパーベリー、タイムなどとともにしばらく漬け込む。
冷蔵庫で数時間~一晩が望ましい。 - きのこの戻し
乾燥きのこを冷水またはぬるま湯で戻しておく(30分程度) - 根菜・玉ねぎ・にんにくを適切な大きさに切っておく。
調理手順
- 肉を軽く焼く(ブラウン)
マリネから取り出した肉をよく拭き、油を熱した鍋(厚手鍋が望ましい)で全面を焼き色がつくまで焼く。 - 野菜・玉ねぎ・にんにくを加える
焼けた肉に玉ねぎ、にんにく、根菜を加えて炒め、野菜の香りを引き出す。 - 液体類を注ぐ
マリネ液、ストック(ブイヨン)、赤ワイン、きのこの戻し汁などを加える。煮立たせてから弱火に落とし、鍋をふたして煮込む。
時間は肉が柔らかくなるまで、1〜2時間程度。 - きのこを加える
煮込み終盤または途中で戻しきのこを加えて一緒に煮込む。 - 仕上げ(クリーム・風味付け)
生クリームを加えてまろやかさを出す。必要に応じてソースやゼリー、ジャム、ソイソースなどで甘み・酸味・コクを調整する。
水溶きでとろみをつけてもよい。 - 味を整える
塩・コショウで調整。ハーブやベリーを飾る。
注意点・コツ
- 肉を焼くときは焦がさないように、強火 → 中火でじっくり色をつけるのがポイント。
- マリネ時間をしっかり取ることで、獣肉のクセを和らげ、風味を深める。
- きのこや野菜を加えるタイミングは煮崩れを防ぐため、後半に加えることが多い。
- クリームを加えるときは火を弱め、煮立たせないように注意。乳製品は高温で分離しやすい。
- ソースの甘み・酸味を調整する素材(ジャム・果実系ソース・酸味あるもの)を少量ずつ加えて味見を重ねる。
- 煮込んだ翌日・冷めた状態のほうが味がなじんで美味しいことも多い。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は北欧のジビエシチュー、ヴィルツグリュタについて紹介しました!
これから秋冬と寒い季節になっていきますが、ヴィルツグリュタはそれを乗り切る活力を与えてくれます。
寒い日にはみんなで温かいシチューを食べるのは乙なものですね!
ちなみに日本ではViltsgrytaという名称自体珍しい気がします。
なので国内で全く同じ名称の料理を提供するお店をピンポイントで訪れることは難しいかもしれません。
しかし、ジビエ料理や北欧料理を取り扱っているお店であれば出会えるかもしれません!
そしてTasteTuneでは毎度作り方も簡単に載せています。
お家でつくるのもまた一つの楽しみ方かもしれません。
私も一度寒い日に味わってみたいです!
最後までご覧いただきありがとうございました!

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