西アフリカの祝祭料理:ジョロフライスを味わう

Gambia

ジョロフライスという料理をご存じでしょうか。日本ではあまり聞きなじみの少ない料理かもしれませんが、アフリカの地では様々な人々から愛される定番メニューとなっています。今回はそんなスパイシーでバラエティに富むジョロフライスを深掘っていきたいとおもいます。
最後までお付き合いください!

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ジョロフライスとは

ジョロフライスとは、鶏や牛の肉と野菜などをトマトベースのスープで炊き込むピラフ風のご飯料理です。
アフリカ大陸の西側、ギニア湾の北岸諸国で食されている西アフリカ料理です。
お昼ご飯などに食され、国民的メニューとして愛されています。

ジョロフライスという名前は後で紹介するウォロフ族に関係があります。直訳すると「ウォロフ族の飯」になります。

ジョロフライスの歴史

ジョロフライスの誕生はウォロフ族と密接に関係します。

ウォロフ族は西アフリカ・セネガル周辺に住む民族です。かつては「ジョロフ王国(Jolof Empire)」という国を築いていました。
当時の主食は、地元で採れる米やキビ(ミレット)を使った炊き込み料理で、トマトやスパイスはまだ一般的ではありませんでした。
ただしこの時期から、海産物や香辛料を使った一皿料理の文化が形成されていました。

その後、ヨーロッパとの交易か始まったことでトマトや香辛料などが持ち込まれるように。これにより、従来の炊き込みご飯にトマトのスープを加える調理法が確立されていきました。

また、セネガルの国民食チェブジェン(Thieboudienne)から派生したという話もあります。チェブジェンとは、魚や野菜をトマトソースで煮込み、米と炊き上げる料理です。
ジョロフライスの魚版のようですが、このチェブジェンの魚が肉に置き換わり簡易化されジョロフライスが生まれたと考えられています。

植民地時代に鉄道や港によって、西アフリカに広く知られるようになりました。今では各地で独自のアレンジがなされ地域ごとに違ったテイストを味わえるのが特徴です。

ジョロフライスのアレンジ

ジョロフライスは地域ごとに独自のアレンジが加えられています。今回はそのうちのいくつかをご紹介します。

1. セネガル式(元祖)

先ほど少し触れたチェブジェンですね。
サバやタイなどの魚をメインに使うのが特徴です。

野菜を大きめに切って入れたり、砕けたコメを使うという特徴もあります。
比較的マイルドな味付けではありますが、魚の旨味を味わえる一品になっています。

また、チェブジェンはUNESCO無形文化遺産に登録されているそうです。

2. ナイジェリア式

トマトソースと唐辛子をたっぷりと使い、見た目も味も濃い一品です。
チキンやビーフ、ヤギ肉など肉系が中心となっています。
スパイスはタイム、カレー粉、ローレルなど香り豊かで、炊き込み方式(米をソースで煮る)が基本です。

スパイシーで香り高い味わいが特徴です。

また、パーティーや結婚式で必ず出てくる“お祝い料理”としても楽しまれています。

3. ガーナ式

タマネギやトマトをじっくり炒めて甘みを引き出す調理法がされています。
米を半炊きしておいてソースと合わせて蒸すことが多く、油が少なくやや優しいテイストになっています。
また、肉をはじめ魚や時にはソーセージを入れるなどの特徴もあります。

ナイジェリア式と並んで「正統派」を争う代表格と言われており、バランスがいい万人受けの一品となっています。

4. シエラレオネ/リベリア式

炒めた玉ねぎ、トマトソース、唐辛子のベースに加え、ココナッツミルクを使う調理法です。
具材に魚やエビなど海鮮も多く登場し、香りは柔らかく、マイルドな仕上がりになります。

海に面した地域ということもあり、魚介類をはじめココナッツミルクをつかうなど、地域性がバツグンに現れた一品ですね。

5. ザ・ディアスポラ版(欧米やカリブ移民コミュニティ)

オリジナルをベースに、多文化融合型という特徴をもっています。
アフリカ系移民によって欧米・カリブ海地域に持ち込まれたというのが背景です。

現地の野菜やスパイスを組み合わせてアレンジたり、ヴィーガン仕様やチーズやベーコンを加える“創作系”などもあり、より個性のあふれるバリエーションになっています。

ジョロフライスの小話

ジョロフ戦争(Jollof Wars)

これはナイジェリアとガーナが「自国のジョロフこそ世界一美味しい」と譲らずSNSやイベントで言い合う風習です。
SNSの食べ比べ動画やジョーク動画を発端として広がっていきました。

有名なエピソードとしてFacebook創業者マーク・ザッカーバーグがナイジェリア訪問時に起きた話があります。ナイジェリア式のジョロフライスを食べ、「最高だ!」とコメントしたことでガーナ側SNSが大荒れする事態になりました。

ジョロフライスは地域によっての調理法が様々です。より親しんだ地元の味が一番というのが譲れないのは頷けますね。それほどジョロフライスが愛されている証拠だと思います。

国によって「赤さ」が違う

地域によって個性の出るジョロフライスはトマトや唐辛子の量、調理時間の差で色が変わって見えます。
ナイジェリア式は真っ赤〜赤茶色、ガーナ式はオレンジ〜赤っぽい色になるそうです。

赤いほど「味が濃い」と思われがちですが、ガーナ式は意外と甘みも強いです。

ジョロフの日

ナイジェリアでは8月22日を“World Jollof Rice Day”として祝う人たちがいます。
SNSではこの日に各自のレシピや写真を投稿し、ハッシュタグ #WorldJollofRiceDay で盛り上がるそうです。

発端は2015年のSNSでの発言がきっかけです。それをブランド企業が取り入れたことで、定跡化しました。
今では西アフリカ料理の広がりとともに国際的関心も高まっています。

ジョロフライスの作り方

材料(4人分)

【トマトソースベース】

  • トマト … 4個(またはトマト缶400g)
  • 赤パプリカ … 2個
  • 玉ねぎ … 1個(半分はソース用、半分は炒め用)
  • 唐辛子(お好み) … 1〜2本
  • サラダ油 … 大さじ3

【ご飯部分】

  • 米(長粒米推奨) … 2合(約300g)
  • チキンブイヨン … 500ml
  • ローリエ … 1枚
  • タイム(乾燥) … 小さじ1
  • カレー粉 … 小さじ1(お好み)
  • 塩 … 適量
  • 黒こしょう … 適量

【具材】

  • 鶏肉(もも肉や手羽) … 300g
  • 野菜(にんじん、インゲン、グリーンピースなど) … 適量

作り方

1.トマトソースを作る

  1. トマト、赤パプリカ、玉ねぎ半分、唐辛子をざく切りにしてミキサーにかけ、ピューレ状にする。
  2. 鍋に油を熱し、ピューレを中火で10〜15分ほど煮詰め、水分を飛ばす。
    ポイント:水分をしっかり飛ばすと、米がベチャっとしません。

2. 鶏肉を下ごしらえ

  1. 鶏肉に塩・こしょう・タイムをまぶして下味をつける。
  2. フライパンで表面を焼き、軽く火を通す(完全に火が通らなくてもOK)。

3. 米と煮込む

  1. 別の大きめ鍋に油大さじ1を熱し、残りの玉ねぎを炒める。
  2. トマトソースを加えて軽く炒め、ブイヨン、ローリエ、カレー粉を入れる。
  3. 洗った米を加えて軽く混ぜ、鶏肉と野菜をのせる。
  4. 蓋をして弱火で20〜25分炊く(米の種類により調整)。

4. 蒸らし&仕上げ

  1. 火を止めて10分ほど蒸らす。
  2. 全体を優しく混ぜ、味を見て塩・こしょうで調整。
  3. 皿に盛り、お好みでサラダやフライドプランテン(揚げバナナ)を添える。

美味しく作るコツ

  • 米は長粒米(バスマティ米やタイ米)を使うとパラっと仕上がります。
  • トマトソースの水分をしっかり飛ばしましょう。
  • 炊き込み後、鍋底の“おこげ”(現地では party rice と呼ばれる)は絶品です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は南アフリカの料理、ジョロフライスをご紹介しました。
バラエティ豊かでスパイシーなテイストを楽しめるこの料理に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。

私も調べていくうちにその魅力にひかれていくのをお腹で感じました。
日本国内ではアフリカ料理専門店などで楽しめるようですが、まだ店舗数がそれほど多くはないようです。
そんな時はぜひお家で作って楽しんでみてください。

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